「ここの特選うな重が最高に美味しいんだよ」
「鰻は贅沢すぎませんか?」
「そう? じゃあ寿司にする?」
「もっと普通のものにしましょう」
「うーん……」

 彼は食べたいものを挙げるものの、ことごとく私に却下されて、考え出してしまった。
 いったいどういう食生活をしているのだろう。鰻やお寿司なんて、日常的に食べる機会は少ないと思うのに。


「……あ、そうだ! いいこと思いついた! まひる、ご飯作って」
「いいですけど、お口に合うかどうか」
「絶対に合うから! そうと決まったら買い出しに行こう!」

 日頃は外食が多く、さらに結衣さんの手料理で舌が肥えている彼が、気に入ってくれる食事を作れる自信はない。
 でも、料理をするのは好きだし、彼が喜んでくれるならと引き受けた。

 グラスをキッチンに下げ、リビングから玄関へ。
 彼は機嫌のよさそうな鼻歌を歌いながら靴を履き、私の手を取って部屋を出た。