お見合いだけど、恋することからはじめよう


タクシーを拾って、諒くんの住まいである新宿の公務員宿舎の独身者用の部屋へ向かう。

「……本当は、それなりのホテルでディナーを食べながら、できたら指輪を渡してちゃんとしたプロポーズをするはずだったんだけどな」

諒くんは返す返すも残念そうにごちった。

「じゃあ、改めての『それなりのホテルでディナー』楽しみにしてます」

あたしはふふっ、と笑った。

「あ、指輪は『サプライズ』じゃなくて、却ってよかった。一緒に選びたかったので」

ほんとは、諒くんからのだったら、なんだってうれしいんだけど。

「えっ、そうなんだ。その方がおれも助かるな。正直、どんなのがいいのかわからないからな。
じゃあ、今度、ななみんが気にいる指輪を一緒に選びに行こう」

諒くんがあたしの頭を、ぽんぽんとする。

……しあわせ、だ。

あたしは諒くんの「特別」になったんだ、と心にじーんときた。

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