指先で軽く摘ままれる手つきは、さっき苺を摘まみ上げたのと同じくらいの強さだ。
 くすぐったいのに、胸が締めつけられる。まるで苺みたいだ。甘いのに、酸っぱい。酸っぱくて美味しい、幸福の味。

 フレッドの空色の瞳が間近に迫った。

「オリヴィア」
「まだ、苺が」

 残っていますと続けようとしたけれど、その言葉は紡がれる前にフレッドの唇へと吸いこまれた。互いの口内に残る苺の味が、煮詰められたジャムのように甘さを増す。

 くたりと力が抜ける。熱を帯びたフレッドの唇が首筋を下りていき、オリヴィアはたまらず吐息を零した。

「……おいで」

 ──この、声。
 まるで甘い、甘い、果実のよう。さっきは苺だと思ったけれど、今やその声はさらに甘みを増して、とろりとオリヴィアのなかに満ちていく。自分だけに向けられた、やっとたどり着いた、その声には抗えない。

 閉じた瞼の裏に夕陽がちらりと射して、再び唇が重なる直前、オリヴィアは祈るように思った。

 この先に迎えるいくつもの季節が、この甘やかな声とともにありますように、と。