思い出すたび、身体中が熱くなる。

 初めて出会った日の荒々しさとは違う、想いを伝えるような唇も。切情を訴える眼差しも。顎に触れた、長く骨張った指先も。

 思考はあらぬところを漂ってまとまらない。それでも嫌ではなかった。それどころか、気持ち良いとさえ思った。そのことに彼女自身が一番おどろいていた。

「……ィア」

 フレッドは今頃どうしているだろう。

 今年は国王軍の駐屯地だけではなく、領地も急きょ視察を受けることとなった。一週間ほどの予定とはいえ、軍の元帥でもある国王をはじめとして、総勢三十名をこえる大規模な視察団を受け入れなければならない。フリークス家だけではもてなしも行き届かない可能性があるため、父親が親戚にも応援を頼んでくれた。それでもオリヴィアは領地に戻ってから忙しい日々を過ごしていた。

「オ……ヴィア」

 明日には視察団がフリークスの屋敷に到着する。昨年末から手紙を出す暇もなかったけれど、彼は元気にしているだろうか。とはいえ、たとえ暇があったとしても、なんと書けば良いのか考えあぐねるうちに日が暮れてしまうに違いないけれど。

 どうしておとなしく唇を受けてしまったのだろう。あんな優しい口づけ……。

「オリヴィア」
「あれ、おば様!? やだ、ごめんなさい」

 オリヴィアは最終確認のために書物机に広げていた準備リストを慌てて端に寄せて、父親の従姉であるマルヴェラを迎えた。