身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい



***


 広大な王宮内、ザイード王がレーナをどこに置いているか検討もつかなかった。

 そもそもレーナについて、ザイード王は王宮内でどのような認知を図ったのだろう。レーナの存在は、王宮内でどの程度共有されている?

 一切情報がないこの状況で、何が最善であるか、まるで掴めなかった。

「ブロード様、王宮へは正面から乗り込むんですか? あるいは、秘密裏に?」

 王宮の尖塔を視野に捉え、並行するアボットが俺に問いかけた。

 アボットのこの問いは俺の逡巡の筆頭で、道中もずっと考えを巡らせていた。 
 将軍職に就く俺は、軍部の代表として、王宮へも定期的に足を運んでいる。運営報告では毎月、関係大臣らと面会もしていた。

「王宮には、今回も大臣あての面会として登城する」

 何が最善かは分からぬが、軍部としての報告を建前として正規ルートで登城し、途中でレーナの捜索に抜けるのが一番無難だと思えた。

「だが、王宮厩舎に馬は預けずにおこう。一応の保険だな」
「ではここいらで、繋ぎましょう」

 俺とアボットは王宮を目と鼻の先にして、馬を下りた。



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