身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

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***


 ブロードさんに無理を押した自覚はあった。けれど、医師の元で助手として働けるかもしれないこのチャンスを、逃す訳にはいかなかった。

 日本では、ずっと医師を志していた。ならば諦めず、この世界でも目指せばいい。

 この時の私の胸には、そんな前向きな思いが詰まっていた。

 けれど前向きの裏では、自立を焦る脅迫観念のようなものに、急き立てられていたように思う――。




 約束を取り付けた翌日、私はブロードさんに伴われ、クレイグス医師の元に向かっていた。

 クレイグス医師は軍医だから、その医務室はブロードさんが勤める軍施設内にある。

 軍施設は庭園を挟んで王城と併設しているから、王都の中央にドドンと聳え立つ王城の尖塔を目指せば迷う事はない。

 その王城に、中央通りを二十分も歩けば着くというのだから、ブロードさんのお屋敷の立地は何気に王都の一等地だ。

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