"鬼"上司と仮想現実の恋
17時。

外回りから帰ってくると、また、石原さんがやってきた。

「瀬名さん、おかえりなさい。」

そう言って、今度はチョコを1箱置いていく。

「え? あの、石原さん?」

また、私が呼び止めると、

「外、暑いし、疲れますよね。
仕事しながら、食べてください。」

とにっこり笑って戻って行った。

チョコ1箱をわざわざ返すのも…と思うと、また受け取ってしまった。

「何? あいつ?」

田中君が隣から聞いてきた。

「分かんない。
金曜日の歓迎会から、懐かれてるみたい。
今朝も缶コーヒーくれた。」

ふぅっ

田中君は、ため息をひとつついて、

「瀬名、お前、認識が間違ってる。
あれは、懐かれてるんじゃなくて、
口説かれてるんだ。」

と言った。
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