遠乗りの日の朝、鬣も豊かな白馬にまたがり姿を表したロベルトは、伯爵に挨拶をし、連れのアントニウスをジャスティーヌに紹介した。
 アレクサンドラはアレクシスとして父の栗毛の馬を借り、同じく栗毛の馬に跨がった騎兵のようなアントニウスに並んだ。
 ジャスティーヌは、馬蹄の押さえる踏み台を上り、ロベルトに引き上げられるようにして馬の背に腰を下ろした。
 首へとむかって傾斜する馬の背に横座りでは、バランスの悪いことは言うまでもない。必然的に滑り落ちないためには手綱を握るロベルトの体に腕を回す他はない。
「そんなにスピードは出しませんから」
 ロベルトは一言断ると、馬を歩かせ始めた。
 ゆっくりと進むロベルトの後ろからアレクサンドラとアントニウスが並んで付き添った。
 そして、その後ろに休憩場所で食す食材や飲み物を載せた馬車が続いた。

 ロベルトが少しスピードを上げる度に、ジャスティーヌがしがみつく力も強くなっていった。
「怖くありませんか?」
 ロベルトの問いに、本当は『怖い』と答えたかったジャスティーヌだが、アレクサンドラから『弱みを見せたら男はつけこむ』と釘を刺されたジャスティーヌは、必死に平静を装って『大丈夫です』と答えた。
 しかし、声が震えるのは止められず、上下に揺さぶれながら舌を噛みそうになったジャスティーヌは、大きくなる風切り音に任せて口を閉じた。


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