こんな時に限って体調が悪いと出て来てくれない航平は、電話ならいいよとそれだけには応じてくれた。

 昼間のやりとりをあらかた話す。

 たが、聞いているのかどうなのか、咳が時折聞え、本当に具合が悪そうだった。

『はあ……で?』

「それだけ」

『もう切っていい?』

「え、何でよ!! 聞いてるじゃん! 私の目標どうするかって」

『そんなの自分で考えなよ』

「いや、いい。航平君に決めて欲しい。それが絶対私には一番合ってるやつだから」

 言い切って、待つ。

『あのねえ…。それを営業部長に聞いてくるやついる?』

「え……そりゃ、もし営業部長が航平君じゃなかったら聞かなかったと思うけど」

『そういう意味じゃなくて……それは自分で考えるもの、はい以上』

「え、だっていつもは色々教えてくれたじゃん!」

『それは業務内容でしょ? はい、おやすみ』

「待って、待って、待って!」

『……』

「なんか、本当に調子悪そうだよね」

『んー』

 話す気がないのが分かる。

「あの、看病しに行こうか」

『は?』

 提案のわりに、随分嫌そうな声だ。

「いやあの、何か聞こうとか思ってるわけじゃないから!」

『…いーよ』

「だってさ……なんかすごいお世話になったし。せめて、こんくらいなら役に立つかもしれないし」

『今もう12時だよ? いいよ。普通に寝た方が良くなる……』

「だけどさ。時間にも関係なく、よくしてくれるじゃん。航平君、いつも」

『……その気持ちだけで充分だよ。……それより明日は仕事だから……早く寝たい………』

「あそう……。ごめんね。出て来てって無理言って」

『いいよ……。可愛い妹だから……』

 え、へーーーー、そんな風に思ってたんだ。

『………』

 束の間沈黙になってしまう。

 よく聞くと電話の向こうからは寝息が聞こえてきた。

 本当に調子が悪かったんだなと反省して、美生はスマホのディスプレイをそっと一押しする。

 別に下心があったわけではなく、もちろん単純にお粥でも作りに行こうかなと思っただけだ。

 随分拒否されたけど…まあ、眠かったってことだろう。

 美生はそれ以上何も考えず、溜息をついて、今一度スマホのディスプレイを明るくさせた。