若杉は確かに胸が大きくて可愛くて若く、ぷりぷりした雰囲気の女性で男性受けがいいんだろうとは思った。そのせいか、男性のお客さんとはよく談笑している。

 だからといって、美生は若杉に対して特に何も感じなかった。

 とにかく仕事がよくできるし、ソツがない。元々良い大学を出ているようだし、仕事熱心なんだろう。男性とやかくは、女子のひがみだとも取れるし、不倫の話もでっちあげのような気さえしてくる。

 何しろ、若杉がいると仕事が楽になる。

 部門長も前任の女性に比べて、副店長下がりだからか、デキるし、まだ年末には早い11月だからか、身体も心も随分楽になっていた。

 関とも話はよくできている。食事が合えば自然に近くに座れるようになった。以前の時めきは航平君に減らされた気がするが、ドキドキして何も喋れないよりは遥かにいい。

 航平も一度店に来たと誰かが言っていたが特にあれから連絡はしていない。

 そもそも、それくらいの関係だったし。元々営業部長に1人だけよくされる、という図式自体がよくはないものだ。

 美生は、仕事の目標云々の話はさておいて、今の現状にある程度満足しつつ、自らの人生において振り返る余裕も出来ていた。

 そろそろ27歳がくる。結婚を考えないといけない年になろうとしている。

 でも結婚して、子供ができたらそのままでは働けない。

 一応、カウンター部門長になりたいという気持ちはあるが、なったところで子供ができたら辞めるかパートにならないといけない。

 同級生も結婚ラッシュが過ぎてしまい、みんなとりあえず仕事はそのまま続けているが、既に子供を産んだ友達をみれば、半分は仕事を辞めて、半分は産休の後パートになっている。

 結婚は絶対にする。子供も産む。

 だとしたら、今は先に相手を見つけることが優先なのかもしれない。

 オシャレ……しようか……。

 ピアスでも開け直してみようか。

 ふと思いつき、鏡を覗き込む。

 大学生の時、開けたはいいが、社会人になってつけなくなったせいで塞がってしまった。

 沙衣吏は色々な種類のピアスを持っていて、いつも付け替えている。

 逆に、花端元副店長みたいに拘りのごとくいつも同じピアスでもいい。

「買いに行こう」

 それで、誰かが気づいてくれればその人が運命の人かもしれないし、違うかもしれない。

 関のことは好きだが、確かに結婚相手としては違っているような気がする。

 ここに来て現実を見、ようやく航平が阻止していたことが分かった気がした。

 だとしたら。うーん。おない年の鹿谷はないし、昔からあまり関わったことのないもう1人の副店長柳原も違う。カウンター部門長の野坂も全然違うし、あの店の中にはもういるとは思えない。
 
 ということは、合コンでも行った方がいいのか……。

 でも、そんなツテもないし、服もない。

 今になってようやくこの4年間、自分が仕事しかしてこなかったことを悟り、なんだか魂が宙に浮いたような気分になった。

 入社してから得た物、それらはひょっとして、何もなかったかもしれないと思うほどに気が遠くなっていく。