副社長は花嫁教育にご執心

手ごわい恋敵



「設楽。やっと来たか」

「ひさしぶり~! ほら、杏奈。来たよ!」

暖炉のあるロビーでくつろいでいたのは、小柳さんのほかに女性がふたり。

灯也さんや小柳さんと同世代なのだろうけど、若いわたしよりよっぽどきゃぴきゃぴと元気のいい声を上げるポニーテールの女性。そして、対照的におとなしそうな清楚系の美人が灯也さんに近づいてきた。

どうやら清楚系のはかなげな美人が、広瀬杏奈さんのようだ。……でも大丈夫。気にしない気にしない。

ちょっと不安定な私の胸中を知ってか知らずか、灯也さんが先手を打つように、「この可愛いのが俺の婚約者のまつり。あんまいじめるなよ」と紹介してくれた。

う、うれしいけど……初対面の人の前でなんと恥ずかしい説明を!

「あはは、赤くなってるー。かわいーまつりさん」

ポニーテールさんは笑ってくれたけれど、お隣の杏奈さんは全く笑ってない。

というか、今にも涙がこぼれそうな大きな瞳……なんて思っていたら、その人の目から本当にぽろっと大粒の涙がこぼれた。

えっ、いきなりどうしたの……!?


< 72 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop