好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】

side真紅



「だから服を脱げと言ってるだろうが!」


「この状況で誰が脱ぐか! 変態!」


「この状況だから言ってんだろ! 血まみれで帰る気か、バカ!」
 

とんでもないことを言うヤツを前に、私は自分の身体を抱きしめるようにして叫びかえす。
 

だ、だって目が覚めたら目の前には男がいて、自分は血まみれで、服を脱げなんて言ってくるなんて、どんな状態⁉
 

目元に涙がにじんできた……。
 

――ここは人気(ひとけ)のない夜の林道。
 

私は顔と服を真赤に染めて、しかし立ち上がれもしないでいる。
 

そんな私の目の前に座り込んでいるのは、月でも切り取ったようなパッと見は美麗な男。


言っていることだけ聞いたら通報モノの不審者だけど。
 

私と不審者が叫び合う――この状況の理由も、実はよくわからない。
 

林道で目が覚めた私の服は赤黒い血で染められていて、背中に走っている傷の痛み。


この不審者の手を借りなければ、眩暈(めまい)が非道くて座っていることも出来ない状態だ。


実際、今も自分を抱きしめている片腕を、不審者に掴まえられていてやっと倒れないでいられるくらい。

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