好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
2 十字架

side真紅



泣いていた。
 

やわらかな熱が離れていくのが淋しくて。
 

あたたかな瞳が閉ざされるのが淋しくて。
 

その熱で手を握って。
 

その瞳に私を映して。
 

それだけが、今の気持ち。今の私の全部。
 

全部全部、私は黎だけになっていた。
 

朝は当たり前のように来た。夜が続くことを願ったのは初めてだ。遮光カーテンの向こうに見えた朝焼けの色に、絶望の光もあるのだと教えられた。
 

離れることを嫌だと思った人と出逢ったのは、夜だった。
 

逢いたい。逢いたい。
 

でも、あの人が私に架けた願い。人間として、生きる。……それも叶えたい。


「真紅ちゃん、顔色悪いよ?」


「え? あ、おはよう」
 

義務感? わからないけれど、多分彼はこういう人間の生活はしていなかったのだろう。


ならば私が叶えなくては。だって、ね。


「おはよう。昨日も梨実(なしみ)さんのとこ?」

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