きっと夢で終わらない
弘海先輩は基本的に本部テントの周辺にいた。
時々審判として駆り出されながら、自分の受け持っているクラスの応援に行っていた。
最初に見つけた時は、女生徒に囲まれながら、談笑していた。
白い肌に映える栗色の髪が、陽に透けて輝いて、なんの変哲も無いスポーツウェアを着ているだけなのに、背丈もあるし、ただ立って腕を組んでるだけでも様になるなあ、なんて。
ほかの教育実習生もまた然りで、大学生ってすごいな。

そう思うのと同時に、なんだか複雑だった。

昨日の弘海先輩の問いかけが、頭から離れなかったのだ。

チャイムに遮られて真相を問い詰めることはできなかったけれど、あの問いには何か含みがあったのだろうか。
はたまた、ただの気まぐれか、ついでか。


——『じゃあ、僕は?』


私が中学生の時には、弘海先輩との距離は普通の人間よりは近かったと思う。
「平等」に接していた中の1人だったし、部活動に所属していなかった私にとっては唯一「先輩」と言える存在だった。当時に同じ質問をされたら間違いなく、なんの迷いもなく「先輩です」と答えていたはず。

でも、昨日は少し考えてしまった。
大勢の不特定多数と言う存在を失った私にとって、人と自分との関係を示す言葉がうまく見つけられなくなった。
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