おやすみ、お嬢様
夕方
目を覚まして、ゆっくりとベットの上で身体を起こす。

窓から白いカーテン越しに朝の光がはいって、部屋を明るく満たしていた。

そのままぼんやり座っていて、ふと気づく。

あたし、泣いてる。

なんで泣いているのだろう。わからない。なにか夢でもみたのだろうか。

わからない、けれど、ただ。

眼をつぶると、光の向こうに誰かいる気がして、涙が出てくる。

ゆっくりと呼吸する。涙が落ちないように。

元気ですか? 元気でいますか? どうか、笑っていてください。

面影を追わないために、ただ、祈った。

愛しさと寂しさはなんて似ているのだろうと思いながら。



眼を開けると、ぼんやりとローテーブルが見えた。どこ?

そのまま動かずにいると、目元から一粒涙が落ちるのがわかった。

なんで、泣いているのかな、わたし。

「一花?どうしたの? 大丈夫?」

声がして、頬をさわる骨ばった指があった。顔を向けると戸惑ったような表情の、懐かしい彼がいた。

体を起こして手を伸ばす。抱きしめてくれる腕がある。そのまま首に腕を回して抱きついた。

「どうしたの?怖い夢でもみた?」

榛瑠の優しい声が耳元でする。

「……わからない」

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