Smile  Again  〜本当の気持ち〜
季節は巡った。


世間ではいろいろなイベントがある時期だが、少なくとも俺にはほとんど無関係。クリスマスイブは普通に練習だったし、そのあとも、大晦日と三が日を除けば、冬休みも毎日練習。


バレンタインなんて行事は、近年下火と聞くが、義理チョコみたいのが、廃れてるだけで、本命に渡すという意味でのイベント性はむしろ、高まってるんじゃねぇの?


渡す方の女子にも、待つ身の男子の方にも、悲喜こもごものドラマがあったみたいだが、俺みたいなとっつきの悪い男に、わざわざチョコを用意してくれる女子なんかいるわけがない。


そういや、由夏はどうしたんだろう?松本さんにあげたのかな?まぁあげたとしても、あの大量のチョコの中に埋もれただけだろうけど。まぁツートップへのチョコの量はやっぱり半端じゃなかった。


女の子達からすれば、みんな想いを込めて、贈ってるんだろうが、お気の毒だけど、自分のあげたチョコが先輩達の口に入ったとしたら、それはかなり幸運だと思った方がいい。大部分のチョコは俺達モテない男達にお裾分けされる運命。


ふざけるなって、言いたい気持ちは分かるけど、あれをもしまともに自分で食べたら、身体を壊すか、一生チョコレートを見たくもなくなるかの、どっちか。憧れの人の健康の為に我慢していただくしかない。


そんなわけで、俺と由夏の関係性にも、特別な変化はない。親同士は、昔のような交流が復活して、食事に行ったり、どこか出掛けたりしているようだけど、高校生にもなって、親のケツにくっついて歩くのも、おかしいからなぁ。


そして今日は卒業式。我が野球部も前キャプテンの村井さんを始めとした、黄金期を築いた先輩達を送り出す日となった。
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