片恋スクランブル
彼と彼女のKiss


人の噂も75日とは良く言ったもので、御園生さんが会社のランチタイムに現れなくなって、私が一貫して『誤解』だと言い続けた結果1ヶ月もしないうちに噂を耳にすることはなくなっていった。

「橘ちゃん、久しぶりに飲みにいかない?」

声をかけてきたのは、菅谷さんだった。

あの電話以来、毎日社食に覗いて声をかけてくれる。

「俺も今日残業ないんだわ」

小幡さんもやって来ていつものテンションで、場を盛り上げてくれたりして。

すっかり皆の気遣いに甘えてしまっている。

御園生さんの姿を見なくなったこととは別に、今までと変わったことがもう一つあった。

「……八木は、来ねぇかな」

ポツリ小幡さんの呟きが、おちる。

今までは毎日ランチタイムに社食に来ていた八木さんが、ここ1ヶ月近く全く姿を現さなくなった。

噂で、毎日お昼には白川さんと一緒に外に出ていくのを見た人がいると聞き、加えて、二人が付き合っているらしいという話まで出てきていた。

嘘だよね?

八木さんが白川さんと付き合ってるなんて話。

八木さんが好きなのは、菅谷さんだよね?

信じたくなくて、でも確かめる勇気もなかった。

菅谷さんも、気になっているんだろうにそんな様子は全く見せなくて。

小幡さんに気付かれないように私をチラリと見て、舌先を軽くだしてみせた。

心配だろうに、菅谷さん相当な強がりだ。

私も、気になってる。

でも、おかしいんだ。

菅谷さんの気持ちと、八木さんの行動を見て以来、二人のことばかり心配したくなる。

八木さんの明るい笑顔が好き。

皆の中で楽しそうに話す彼を見ていると幸せになれる。

カレーが大好きで、ご飯大盛にして食べる彼を見ていると可愛くて。

映画のことになると、かなりオタク的に話し出す所も、面白くて。

でも。

< 64 / 159 >

この作品をシェア

pagetop