十二月も中旬に差し掛かり、吐きだす息が白くなる。歩道に沿って立っている街路樹の葉は全て落ち、時々吹く北風に小枝を震わせている。
 通勤時間帯を過ぎているせいで駅に向かう道には人がまばらだ。慌ただしい時間をやり過ごした後の、ホッと緩んだ雰囲気の中、千紗子は一人歩道を歩いていた。
 目的地はすぐそこだけど、出来たら早く済ませてしまいたい為、気持ちが焦るから自然と足早になる。
 
 足だけはせっせと動かしながらも、千紗子の意識は数時間前に雨宮交わした遣り取りを反芻していた。

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 「俺は先に出るから、千紗子は出勤時間までのんびりしてて。家のことは何もしなくて構わないから。」

 「はい、ありがとうございます。」

 雨宮は八時前にはマンションを出る準備を終わらせていた。

 早番の出勤時間は九時。それよりも一時間も前に家を出るのだから、誰よりも早く図書館にいるわけだ。
 スーツを着た雨宮の後ろを着いて廊下を進みながら、千紗子は納得した。

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