決して結ばれることのない、赤い糸
そして、わたしも心臓がドキッと跳ねた。


なぜなら、電光掲示板に表示された名前――それは。

【瀧隼人】…だった!


久しぶりに見ることのできる隼人のプレーに、落ち着いてなんていられない。


…だけど。

一瞬脳裏に浮かんだのは、事故でケガをしてギプスで固められた隼人の脚。


期待と不安とが入り混じる中、試合は再開した。



残り10分を切ったけど、未だに両校無得点。

お互い、焦りと疲れが見え始めていた。


1点でも入れば、それが決勝点となることだろう。


選手や観客の間にも、緊張と張り詰めた空気が流れる。


いつ決まるか…。

はたまた、いつ決められるかわからない試合展開に、目が離せなかった。


緊張で、フルートに添える手に汗がにじむ。


――そのとき!


マークしていた選手の隙を突き、走り出す隼人。
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