エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……巴が、煽るからでしょう」
鋭く細められた瞳に睨まれ、どくんと心臓が揺れる。
その妖艶な瞳の引力に吸い込まれて、ここが映画館だということを忘れてしまいそうだ。
「煽って、なんか……」
反論する私に、体の内にこもった熱を逃がすようにふうっと息を吐いた部長。
それから、お互いの唾液で濡れているであろう私の唇に骨ばった親指を添え、ゆっくり拭いながら、彼がささやいた。
「やっぱり今夜は、添い寝コースにしましょう、もっとも、きみを安らかに眠らせるためではありませんが」
それはもはや“今夜は寝かさない”と言われているのと同じで、全身がぶわっと熱くなる。
今日のデートは、食事して映画を見て終わり。勝手にそう思っていた私は、スリラー映画を見ている最中よりもずっと、心臓が激しく脈打つのを感じた。