色気があるといえばいいのか、女の私が負けたと思える程、とにかくきれいだ。そんな人に褒められると、嬉しさより謙遜したくなる気持ちが勝る。

「ほら、新。鼻の下を伸ばしてないで」
「ああ。いいね。よく似合ってる。かわいい」

五十嵐さんは私の頭に手を伸ばしかけて、すぐに引っ込めた。頭を撫でようとして、髪がセットしてあることに気付いたのだろう。触れてもらえないことを、とても残念に思ってしまった。

着物の男性は、やはり五十嵐さんの友人で、しかも赤ちゃんのときから一緒にいる幼馴染みなのだと紹介された。
子供の頃の五十嵐さんのお話など、聞かせてもらえないかと期待したが、五十嵐さんは長居しようとはせず、「じゃぁ、またな」とあっさり別れの挨拶をかわす。

呉服店を出て、店が見えなくなった頃。五十嵐さんは急に立ち止まって私に言った。

「ああいうほうが好み?」
「え?」
「さっきの、店主みたいなきれいな顔のほうが好み?」
「どうしてそんなこと聞くんですか?」
「さっき、あいつに顔を赤くしてたから」
「それは単に私が初対面の人に、そうなりやすいからです」
「…………そうか」

きまりが悪そうに、彼は自分の頬をポリポリと軽くかいた。
まるで、ちょっと嫉妬したみたいに。なんだろう。顔がむずむずする。くすぐったい。

「五十嵐さん。正直に言うと、さっきレストラン選びに迷わなかった時、ちょっともやっとしました。今までどれだけ女性を連れまわしてきたんだろうって」
「店に詳しいのは、単に地元なだけだ」

多分、それは半分本当で半分嘘。経験値の差はどうにもならない。張り合っても仕方ない。

「あの、腕を組んでもいいですか?」

歩き出した五十嵐さんに、私は駆け寄った。

「お手をどうぞ、お嬢さん」

どう頑張っても追いつけないから、せめて置いていかれないようにしなければ。