恋の始まりの物語
俺の事情~side 湯川
──やられた。

残された手紙を、クシャッと握りしめた。

朝、一緒に目覚めて。
彼女に改めて告白して、関係を確定させるつもりだったのに。

鍵がポストに落ちる音で目が覚めた。
まだ6時前だ。

多分、今追いかけても、彼女は部屋にいない。

実家に帰るというのは本当かもしれないが、俺が彼女の行動パターンがある程度読めるのと同じくらいには、彼女も俺の行動パターンを把握している。

追いかけられるのは、想定内のはず。
だから、このまま部屋に帰ることはない。
確信できる。

一応、携帯に電話をかける。
案の定、留守電のアナウンスだ。

この二日間は、完全に俺をシャットアウトする気だな。

──そっちがその気なら、それでいい。
混乱するのも、想定内だ。

逃がさないために、強引に抱いた。

あいつには悪いが、もう逃がしてやらない。
──早く諦めて、堕ちてこい。
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