一途な彼にとろとろに愛育されてます
「けど、慎重になってるばかりじゃ一向に進まないし。それどころかお前は他の男の好意にすら気づかないで危なっかしいし」
うっ……。
チクチクと痛いところを指すその言い方に、苦い顔になってしまう。
そんな私をみて、檜山はふっと笑った。
「だから、もう慎重になるのはやめる。終わるくらいなら変わらないままの関係を望んでたけど、そういうのもやめる」
それは、私が抱いていた思いと重なる言葉。
叶うかなど、わからない恋。
気持ちを伝えて終わってしまうくらいなら、このまま、同居人のままでいたい。
そう、檜山も願っていたんだ。
「好きだ。俺にとって、ミネコ以上の女はいないよ」
ずっと、聞きたかった言葉。
そのひと言がとても嬉しくて、涙が溢れ出してしまう。
「……私も、好き」
不器用で、時々意地悪で、すぐ怒る。
だけど、そんなあなただから愛しい。
私にとっても、檜山以上の人なんていないよ。
檜山は右手でそっと涙をぬぐうと、顔を近づける。そしてゆっくりと唇を重ねた。
初めて触れる、互いの唇。
ここまでくる道のりを埋めるかのように、長い長いキスをした。
一歩踏み出す関係は、私たちを同居人から恋人に変えた。
幸せなときもあれば、悲しいときもきっとある。
喧嘩だってするだろうし、素直になれないこともあるだろう。
だけど、今日も明日も、この先どんな時だって同じ家に帰ろう。
『ただいま』
そう言って目を合わせれば、どんなことも乗り越えてしまえる気がした。
end.