翌日も、田丸さんに出す資料を作り、やりたくない方法ながらも模索する。

『...やっぱ嫌なんだよな...』

当の田丸さんが現場に出ているのをいい事に、独り言満載で仕事を進める。

『どーした』
『?!!』

...また急に現れる...。
心臓何個あっても足りないんですけど...。

『また急に...。でもよかった。見て貰えますか?』
『ん?』

手に持っていたバインダーをデスク脇に置き、後ろから私のデスクに手をつきながら、どれ?と顔を近づけられる。

相変わらず筋肉質な腕が見えるが、指先は細く。黒髪がサラサラと流れ、メガネにかかる。
切れ長の目は綺麗な二重で、メガネが余計に際立たせる。
綺麗な顔が横にあると、ものすごく緊張する...。

『...これ』
『ん?...んー...。却下、といいたいとこだけど?』
『苦笑』
『これがお望みなわけか』
『そうですね』
『全然効率よくない...』
『おっしゃる通り』
『もう一度話そうか』
『時間の無駄かもね...。非効率なやり方は不本意だけど...』
『これ、データ入れとけよ、俺のとこ』
『わかりました』
『で?何時に帰ってくるんだっけ、この人ら』
『14時になってるね』
『はぇぇな...』
『ついでに、これも相談していい?』
『ん、どれ?』

顔を近づけて見つめれば、綺麗な顔。
手入れの行き届いた柔らかなオレンジがかった髪に、艶っぽい肌。目元は長い睫毛にベージュ系のシャドー。茶色が強い黒目は大きく、切れ長の二重。片耳だけピアスをしているようで、髪をかきあげるときにチラチラ見える。

『っ、近いですってば 笑』

ほのかにバラの香りがするのが心地よく、つい近くにいたくなる。
ふっ、と耳元で笑ってしまうと、なんともいえない色っぽい顔で見上げられる。
へぇ?耳弱いんだ?と、勝手にしたり顔になる。

『んで、どーれ?』
ちょっと低めのトーンで話しかければ、悶えそうな顔で睨まれる。
もしかして、コイツ低音好き?笑。ちょっと自分の声に感謝する。


『んもう...、これです。データの数字がバラけているので、突合はしといたんですけど』
『ん?なんでバラける?』
『わからない。私が田丸さんからもらったデータとは全然あわなくって。両方で作っておきましたけど...』
『なんだろうな?』
『うーん、聞いてみないとわからないよね』

困ったね?っていう顔で見上げられると、ドキッとする。

心臓がうるさくて、悟られたくない。
一瞬理性が飛びそうになる。

葛藤で胃が痛いのは...歳のせいか...?苦笑。