「何で黙ってた?」

沈黙のまま辿り着いたフレンチレストランで、光琉はイライラしたように口を開いた。

「あの日、って、中村と遙季の間で何があった?」

もう隠し通す必要はない。偶然か必然か、光琉は今や精神科医だ。

本当のことを知ってダメージも大きいだろうが、さっき゛俺と向き合ってくれ゛と言ってくれたばかりでもある。

「あの日、美術室に゛先に帰っててくれ゛っていう光琉の伝言をしに来たのが中村さんだったの。」

光琉は、衝撃を受けたような顔をした後、悔しそうに自分の膝を何度も叩いた。

「あいつ、よくもそんなこと,,,」

あの事件の後、先に帰ったことを責める光琉に、

ただ、

゛ごめんなさい゛

と謝った遙季を光琉は信じて、それ以上深入りしなかった。

「何で黙ってたんだ?」

「光琉が,中村さんを責めたり、自分を責めたりして,,,あれ以上傷つくのが嫌だったから,,,」

俯く遙季の声は、いつもと打って変わって小さかった。

「じゃあ、何で俺を避けた?」

「光琉が、私といることで、また同じ目に合ったら嫌だから」

゛全部俺のためじゃないか!゛

光琉は、これまでの不可解な遙季の態度にイライラしたり、責めたりして時間をやり過ごしてきた。

なのに全く嫌いになれずに、ずっとストーカーのように遙季の周りをうろつくだけだった。

「ごめんな、遙季。俺のせいで,,,」

「ほら、そうやって自分を責めるから、それが嫌だったんだよ」

遙季は、

「めっ!」

と、光琉の頭を叩いて笑った。

守られていたのは自分だったのかもしれないが、遙季は何かを勘違いしている。

「これから俺の8年分の時間を返せよ」

光琉は遙季の腕を掴むと、ニヤリと笑った。

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