第六章 不安な気持ち、つながる気持ち

今日も電話が鳴り響く中、バタバタと忙しく仕事をこなしていた。

もうすぐ外出する予定になっているわたしは、急いで資料の最終チェックや、昨日の退社後に連絡が来たお客様への対応に追われていた。

「恵麻ってば最近調子がいいじゃない? 今日も契約に行くんでしょ」

芽衣子がパソコンと資料の間からできた隙間から、顔を覗かせていた。

「はい。今月はなんとかなりそうです。よかった研修前に達成できそうで」

来週から一週間、中堅社員向けのコーチング研修に行くことになっている。

泊まり込みで課題も多く社内でも地獄の研修として有名な過酷な研修だ。

「あとは、神永様の契約だけね」

「あ、あはは。それはもう少し時間がかかりそうです」

と、いうのも彼が〝デート〟と言ってふたりで出かけたあの日以来、彼が忙しくてまったくアポイントがとれていないのだ。

一度だけ、彼が隠し撮りした水槽を真剣に覗き込むわたしの写真が、アプリで送られてきただけ……。

もしかしたら会えるかもと思って、他のお客様のところへ訪問したついでに立ち寄ったこともあったけれど、不在だったり仕事中だったりで資料を置いて帰ってきた。

今日も時間があれば寄ってみよう。新しい商品も出たし。社員さん達にもおすすめしたい商品があるし。

わたしは追加の資料をバッグに入れると、ホワイトボードのネームプレートを〝外出〟にして、帰社時刻を書くとすぐにフロアを飛び出した。

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