第四章 寝顔を見せた朝



週半ばの水曜日。夕方先日口座を開設してくれた坂上さんを、お礼をかねて訪問した。

あさひ証券の本社は水曜日をノー残業デーと定めているので、わたしも今日は坂上さんを訪ねたらその足で直帰する予定にしていた。

そのせいで、うっかりおしゃべりに花が咲き、ケーキを二個もいただくほど長居をしてしまったのだけれど。

お礼を言ってエスポワールの事務所を出て、駅へと向かう。

今日は神永さんに会えなかったな……。

何度も通い馴れたレンガ道を歩きながら、思うのは彼のことだ。

アポイントを取っていてもキャンセルになることも多い。

忙しいのだから、約束もしていないときに会えるとは思っていなかったけれど、少し寂しい。

足元にころがっていた小石を蹴ると、コロコロと転がった先に見覚えのある車があった。

「あっ!」

神永さんの車だ。もしかしたら中にいるかも。

逢えないと思っていたのでうれしくなって駆け寄った。

いた!

ちょうど街灯の下に車が止めてあったので、車内の様子が分かった。

どこかに電話を掛けていたようだが、通話を終えると背もたれに体を預けて額に手を当ててじっとしている。

この作品のキーワード
結婚  社長  ウエディング