「君は本当に、それでいいのか」

彼が眼鏡の奥から、じっと私を見つめる。
きっとそんなつもりはないのだろうが、責めるような瞳に内心、冷たい汗をかいた。

いままでずっと、諦めることの多い人生だった。

周りの目には、なんでもわがまま放題に育ったお嬢様、そんなふうに見えていただろう。

けれど、私の好きにできたことなんて、あまりない。

いつもいつも、父の、婚約者の顔色をうかがい、その希望に添うように振る舞ってきた。

「私は」

もうなにも諦めないと決めた。

父と婚約者の言いなりにはならない。

あの――籠の中にはもう戻らない。

「私はもう、諦めません。
婚約者とも結婚しません」

私には許されない言葉。