目が覚めたら春熙の腕の中だった。

……ああそうか、あのまま寝ちゃったから。
何時、なんだろ?

手の届く範囲に携帯はない。
窓の外はまだ明るいが、少しずつ夕闇が混ざりはじめていた。

「んー」

もそもそと身動きをしたら、春熙が声を出した。
起きたのかと思ったけど、またしっかり私を抱きしめ直して寝息を立てている。

「春熙と結婚するのは嫌」

ぼそっと小さく、呟いてみる。
生まれて初めて口にした言葉。
私には――決して、許されない言葉。

「高鷹部長が、好き」

口に出した途端、みるみる視界が滲んでいく。
胸が痛い。
ばりばりと掻き毟って、この奥にある痛みの原因を取り除いてしまいたい。

「愛乃、起きたの……?」