「ほんとにいらぬ手間を取らせてくれるよね」

春熙の運転は酷く荒い。
急停止急発進を繰り返し、寿命が縮んだ。

「だいたい、杉原がしっかり仕事をしないから……。
あいつはもう、クビだな」

杉原課長がいったい、どうしたのだろう。
もし、なすすべもなく私を経営戦略部へ異動させたのを怒っているんだとしたらお門違いだ。

「……杉原課長が、どうしたの?」

私のせいで無関係な人を路頭に迷わせるなんてできない。
杉原課長にはふたりの娘さんがいて、ひとりはこの春に大学生になったばかりだ。

「あいつが高鷹の転居届、ちゃんと処理してなかったんだ。
だからこんなに手間取った」

たぶん征史さんのマンションの場所がわからなかったんだ。
警察を利用するなら、こんなに時間がかかるはずがない。
けれど征史さんが転居した先が、会社には登録されていなかったから。

きっと杉原課長はあの日、私がいなくなってから他の人たちに当たり散らすのに忙しくて、手続きのことはすっかり抜け落ちていたのだろう。