経営戦略部に異動したその日は覚えることがいっぱいで、ばたばたしていた。

「……ちょっと待て。
君はエクセルの基本操作すらできないのか」

「……はい」

高鷹部長はその長い指で額を押さえ、信じられないとでもいうかのようにあたまを二、三度振った。

「いったい、いままでなにを……って、なにもできなかったんだな。
すまない」

高鷹部長が悪いわけじゃないのに、彼は真摯に私へ詫びてくれる。
そういう姿は、いままで父から聞かされてきた高鷹部長の話からかけ離れていた。

「椎名(しいな)!」

「はい」

高鷹部長に声をかけられ、背の高い女性がこちらに向かってくる。
長い髪を高い位置でひとつにくくったその女性は、まさしく私が憧れたキャリアウーマンのようだった。