わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜

一花は、今、目の前にいる男の整った横顔をじいっと見ながら考えていた。

高校生の頃はもっと細くてガリガリっぽかったなあ。なんだか、目つきも違う気がする。今の方が落ち着いてるけど、でも今の方が怒ると怖いし。

10年もたてば変わって当たり前だけど、変わっていくところを見てないから、時々、おかしな感じがするのよね。

っていうか今日はいつもより目つき悪くない? 働きすぎなのよ。

その金色の瞳は一花の方には向いてなかった。

榛瑠は横にいる一花の視線を無視して、日の降り注ぐ部屋のダイニングテーブルにノートパソコンを広げて、なにやらコードを早い速度で打ち込み続けている。

一花はその横に座って暇を持て余していた。

あと何が違うかな、そうね、髪型は意外と変わってないかも。

そう思いながら、一花は半ば無意識に金色の髪に手を伸ばしてふれた。

榛瑠は手を止めて軽く目を瞑ると、一花に向き直った。

「お嬢様」

「はいっ、何?」

一花は手を引っ込めると緊張した声で返事をする。

「すみませんが、邪魔です。向こうに行ってて下さい」

「……何にもしてないもん」

「触ったでしょうが。さすがに気が散る。邪魔。この仕事が終わるまで近寄らないで静かにしてて」

「……ひどい」

一花の抗議の声に耳を傾ける事なく、榛瑠はパソコンに向き直って作業を再開する。

一花はふてくされながらリビングをでて寝室のベットの上に寝転がった。

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