雨宿り〜大きな傘を君に〜

もう少し歓迎されるものかと思っていたから拍子抜けだ。それでも同情の目で迎えられるよりもずっといい。


「高校には通える距離だから問題ないと思うが、なにか新たな手続きなどすることがあれば言え。必要最低限の要求は認める」


「はい、ありがとうございます」


「一緒に住むと決めた以上、勝手に逃げ出すことは許さん。いいな」


釘を刺される。
分かってる。戻りたいというワガママは通用しない。


「はい」


緒方さんは切れ長の目を閉じた。




「………辛い思いをしただろう」


「……」


ソファーに向き合うようにして座っている私たちの空気が変わる。
長い足を組み直して緒方さんは微かに笑った。


「頑張ったな」


「……」


さっきまでの荒い口調は消え去り、穏やかな声色に変わった。


「あまり無理するなよ」


「…ありがとうございます」



次の瞬間には緒方さんは立ち上がっていて、背を向けていた。それが彼の照れ隠しのように思えて、心がポカポカと温まる。

ああ…。ここに来て良かったな。


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