君の笑顔に涙する
明日と明後日

 「映画見たい」

 八月まであと二週間。明後日から夏休み。
 そんな日の放課後、図書室で、いつもの場所に座り、意味深な笑みを浮かべた凛。僕は、「また、突然な」と苦笑いをこぼす。

 「今さ、ホラー映画やってるじゃない? 人形が襲ってくるやつ。あれ、見たい」
 「よりにもよってホラー? なにそのチョイス。凛、ホラー好きだっけ?」
 「んー普通。すごく普通」

 そんな凛に、「普通なのに、見たいの?」と僕は言う。
 そんな僕に、「うん。見たい」とハッキリ言う凛。

 「ねえ、いいでしょ? 有」

 凛は、ずるい。
 凛が行きたい、と言ったところに、僕が「行きたくない」なんて言えるはずがない。

 「いいよ、行こう。いつ行くの?」
 「明日」
 「……え?」
 「明日! 明日、終業式だけでしょ? そのまま映画見に行こう!」

 そう楽しそうに言う凛に、僕は言い返せるはずもなく「わかったよ」と苦笑いをこぼした。

 「じゃあ明日、終業式終わったらすぐね!」

 そう笑って言う凛に、僕は「うん」と、そっぽを向いて答えた。

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