來夢は雪也の事件を取り扱った警察署に出向いた。

 ほぼ門前払いだった。

 來夢の名前と連絡先を訊かれ、担当した者から連絡させますと言われたきり、待てど暮らせど連絡はこなかった。

 待ちきれずにまた警察に出向いた。

 小さな部屋に通されずいぶん待たされ、やっと出てきたのはいかにも新人といった感じの若い男だった。

 訊けば今年採用されたばかりだという。

 それでも必死になって來夢は説明した。

 男は真剣に頷きながらメモを取ってくれた。

 その後もやはり警察から連絡はこなかった。

 諦めずにまた警察に行った。

 今度は女性が出てきた。

 見たことのある顔だと思ったら、あの時の警察官だった。

 來夢に雪也のセックスがノーマルだったかどうか訊いてきた警察官だ。

 來夢はすがるようにして雪也の潔白と雪也は自殺ではなく本当の犯人に殺されたのだと説明した。

 彼女は哀れんだ目をして來夢を見た。

「あなたの気持ちはよく分かる、でももうそのことは忘れなさい。自分を大事にしなさい。未来のために生きなさい」

 納得しない來夢を残して彼女は建物の奥へと消えた。

「待って!待って本当に雪也は!ちゃんと真実を探して!本当の犯人が、人を殺した男がいるんです!」
 
 來夢は声を涸らして叫んだ。

 どうして、どうして全く取り合ってくれないのだ?

 そのとき誰かに肩を叩かれた。

「無駄ですよ」

 やつれた顔をした年配の女だった。

「警察は正義なんかじゃありませんから。彼らはただの公務員です。事務的に仕事をこなしているだけです。ドラマや映画に出てくる熱血刑事たちはあれらはお話の中の作り物ですよ。現実だと思っちゃ駄目です。この世の中いくらだって冤罪や警察の隠蔽事件があるでしょう。1度処理された事件はよほどのことがない限り再調査なんてしませんよ。当たり前でしょ、自分たちの仕事が間違ってました、と認めることになるんですから。なかなかしませんよ、そんなこと」