地味子のセカンドラブ―私だって幸せになりたい!
8.お給料を上げてくれた!
私が岸辺さんの部下になって3か月経った。仕事も覚えて来たので、任せられることも多くなった。吉本さんより頼りにされているところもある。

ただ、岸辺さんはこれを露骨にすると吉本さんも気にするだろうと、心がけている。私もそれが分かっている。

ここへ来てからの主な仕事は、会議録を作ることだったので、会議にはすべて出席させてもらっている。

あとは会議の日程調整と資料作り。それで段々と進行中のプロジェクトの内容も分かってきた。

それで、私の頭の整理のために、現在5件進められているプロジェクトの各会議の日程調整を間違いなく開始できるようにスケジュールの一覧表を作った。

岸辺さんは、これを見れば会議の日程調整を間違いなく開始できると喜んでくれた。

岸辺さんは自分の作った資料を私に見せて、意見を聞いたり、ミスタイプのチェックをさせるようになった。判断に迷うと私の意見を聞くこともある

。私は岸辺さんと違って、少し距離をおいて見ているので、参考になるとのこと。当事者は意気込みが強すぎて感情的になるきらいがあると言っていた。

岸辺さんは部下には、意見を聞くと自分の意見を言ってくれるが、一旦決めたことには従って実行してもらいたいと思っているみたい。

その点、私はいろいろ意見を言うが、岸辺さんが判断して決めたことはそのとおりに一生懸命に実行する。

吉本さんは自分の意見と違うことには消極的で、それを納得させるのに手間がかかるみたいで岸辺さんは手を焼いている。

岸辺さんは仕事をできるだけ定時に終わらせるようにしている。遅い時間になると調整や交渉する相手が退社したり疲れてきたりして能率が悪いとか。

だから、私の残業もほとんどない。早く帰れるのはいいが、総務部にいるときより給料が少なくなっている。

岸辺さんは総務部にいたころよりも会社に役に立つ仕事をしてくれているのに申し訳ないと気にしてくれているが、仕事が楽しいから気にしなくてよいと言っている。

岸辺さんが時々こちらを見ながら何か室長と相談している。

席に戻ると、私に業務内容が変わってきたので室長と相談して契約をし直すから給料が幾分上がるかもしれないと言ってくれた。

私は給料が上がるより、室長に仕事を認めてもらえたことが嬉しいと言った。

それから2週間ほどたって、親会社の担当者が私を訪ねてきて業務内容の打合せをした。

前もって岸辺さんと打合せたとおり業務の増加内容を話したが、契約をやり直すとのことだった。

終わってからすぐに岸辺さんに小さな声で耳打ちをした。

「お給料を上げていただきました」

岸辺さんも小声で聞く。

「いくら上がった?」
「月額3万5千円です」

「前の残業手当と比べてどうなの?」
「こちらの方が少し多いです。ありがとうございます」

「室長にも目立たないようにお礼を言っといて」
「分かりました」

私はすぐに室長にお礼を言いに行った。室長からはこれからも仕事をしっかり頼みますと言われた。

ブログにはこう書き込んだ。

〖カッコいい上司が私のお給料を上げてくれるように交渉してくれて、お給料が随分上がった〗

コメント欄
[もっと働かせようと考えているから過労にならないように気を付けて]
[あなたのお給料のことを気にしてくれるなんてそんな良い上司はいないよ]
[あなたのことを相当に思ってくれている。これは尋常じゃない!]
< 9 / 23 >

この作品をシェア

pagetop