しあわせ食堂の異世界ご飯3
「お兄〝さま〟なんて呼ばれたのは初めてだ」
「私だってそうですよ! リズちゃん、とっても礼儀正しいですね」
 シャルルが褒めると、リズは「ありがとうございます」と微笑む。
「さっき集まってる人たちが言っていたのを聞いたんですけど、アリアお姉さまたちは食堂をやっているんですか?」
 会話に入りこそしなかったけれど、リズは気になって聞いていたらしことをアリアに尋ねた。
「うん。しあわせ食堂っていうお店で働かせてもらってるんだよ」
「今度、遊びに行ってもいいですか?」
「もちろんだよ。リズちゃんなら、いつでも大歓迎! ね、カミル?」
「ああ。いつでも遊びに来ていいぞ」
 アリアとか見るが快諾すると、リズが「やったぁ!」と嬉しそうに飛び跳ねる。
「こらこら、お転婆はそれくらいにして帰ろう」
「はい、お父さま。アリアお姉さま、絶対に遊びに行くので待っていてくださいね」
「うん。いつでもおいで」
 リズは出会ったときと違い、もうすっかり笑顔だ。
 アリアたちはリズとライナスが帰って行くのを見送りながら、無事に父親を見つけることができてよかったねと笑い合う。
「んじゃ、俺たちも買い物をして帰るか」
「そうだね。もうすっかり夕方になっちゃったし、寒さも増したからね」
 カミルの提案に頷き、アリアたちも市場を歩き出す。
(今日の夕食に汁物は欠かせないよね。何にしようかな……あ、あの野菜はいいかもしれない)
「カミル、あそこのお店で野菜を買って帰ろう! 夕飯に使うから」
「わかった! もう腹ペコだから、楽しみだな」
「私もペコペコです。アリア、海老は売ってないんですか?」
「シャルルは海老が好きだねぇ。でも、今日は見かけなかったかな」
 腹ペコ主張を始めたカミルとシャルルを見て、早く帰らないと大変なことになりそうだと思うアリアだった。
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