星空電車、恋電車
「千夏、私たちもグラウンドの真ん中まで行こうよ」

「ムリ。夕飯食べ過ぎてあれはしんどい。おまけにあそこに混じったら京平先輩たちに遊ばれそうだし」

仲良しの蘭に誘われたけれど、ちょっと無理。
グラウンドの真ん中あたりで京平先輩たちが後輩の腕をつかんでグルグルと振り回しては手を離してどっちもフラフラになるという危険な遊びをしてる。
今あんなことされたらせっかくとった夕食をリバースしちゃう。

「じゃあ、私行ってくるよ」
「どーぞ、どーぞ。でも、蘭もリバースに気をつけてね」
「わかってるって。楽しんでくるー」
蘭は他の女子部員とはしゃいだ声を出して走っていった。

京平先輩のぎゃははとはしゃぐ声に”子どもかよ”と思った瞬間「ガキだなー」と隣で呆れるような声がした。

「樹先輩」

私の隣には憧れの樹先輩が立っていた。

樹先輩はあの中にいなかったんだ。いつも京平先輩と一緒にいるのに珍しい。

「千夏はアレに参加しないの?」

薄暗くて樹先輩の表情がしっかりと見えないけれど、ちょっと半笑いしている。

「夕飯、食べ過ぎちゃって参加できません。今、アレされたら皆さんにご迷惑をかける自信がありますから。樹先輩こそ、いいんですか?」

「俺もいい。怪我したら困るし、あいつのバカがうつるのも困る」
京平先輩を見ながらフッと笑っている。

怪我は本当だろうけど、樹先輩は京平先輩のことを本気でバカにしているわけじゃないことは知っている。

この二人、本当に仲がいいのだ。
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