梅雨真っただ中の月曜日の朝、いつものように出勤する。

しとしと陰鬱な雨が降っていて、まるで私の心中を代弁しているかのようだ。


空模様から、昨日の出来事を思い出してしまう。

今日ほど会社に行くのが憂鬱だった日はない。 

……先週の土曜日は楽しい出会いがあったのに。

恨みがましく傘の下から鼠色の空を見上げる。



***



朝から仕事が立て込んでいて今日は残業になってしまった。

それでも明日は休みだし、まあいいか、とおおらかな気持ちになる。

午後八時半を過ぎた金曜日の電車は混雑している。

人の間を縫うように扉付近のつり革につかまる。

肩に下げたバッグからスマートフォンを取り出すと、姉からメッセージが一件、届いていた。


自宅がある最寄り駅に着き、足早に改札を抜けると生ぬるい風が髪をさらう。

夜になっても相変わらず気温は下がらず、湿度も高い。

駅前にある大型スーパーの照明が、夜道を明るく照らしている。


「もしもし、お姉ちゃん?」

手に握ったままのスマートフォンで、姉に電話をかけた。

『お疲れ様、詠菜。今、帰り道?』

「うん、メッセージ読んだよ。明日の優月(ゆづき)ちゃんのピアノ教室、私が付き添うわ」

『本当? 助かるわ。いつも手伝ってもらってごめんね。総悟(そうご)が明日から出張なのよ』

「気にしないで。土曜は予定がなかったから」