俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「こ、れ……」

ギュッと心臓をなにか強い力で鷲掴みにされた気がした。 


クリアファイルにきちんと収まった薄い書類、それは采斗さんが記入済みの離婚届だった。

ドクンドクンと自分の鼓動がやけに大きく響く。


『離婚届、本当に用意してほしいのか?』


以前に彼に確認された台詞。

あの時、私は肯定した。

だからここにあってもおかしくない。

元々、そういう約束だったのだから。


でも。

期間限定だと、かりそめの妻だと何度も自分に言い聞かせながら、本当は心のどこかでずっと一緒にいられるのではと期待していた。

お互いの気持ちを伝えて、想いが通じたと思っていた。


でも、それは完全に私の独りよがりだったとこの書類が示している。

だって本当に私と添い遂げるつもりなら、ここにこの書類はないはずだ。


「……バカみたい……」

のろのろと収納ケースを元に戻す。

私がここに触れたという痕跡を残さないために。


一番下に収まっていたのは私の目に触れさせたくなかったから?


これまで、私を好きだと言ってくれた彼の気持ちは本物だったのかもしれない。

でもそれでも、どうしても如月さんへの想いを諦めきれなかったのだろう。

だとしたら、私の気持ちはあの人に重荷なだけだ。


そっと収納扉を閉め、震える足を無理やり動かして自室に入る。

ドアを閉めた途端、ズルズルと床にうずくまる。


「ふっ……うっ……」

込み上げるのは苦い涙。

心が、ヒリヒリ痛んで悲鳴を上げている。


期限が来たら離婚するつもりのくせに、どうして優しくするの?


叫びたいのに、文句のひとつも言いたいのに、喉の奥から零れるのは情けない嗚咽ばかり。

如月さんに敵うわけがないとわかっていたのに、勝手に期待して舞い上がっていた愚かな私。


これから先、私は一体どうしたらいいんだろう。
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