目を覚ますと、いつものように私の身体には彼の長い腕が巻き付いていた。

慣れてしまったその体温がつらい。


采斗さんは背中から私を抱き込むように眠っている。

先に私が就寝している時はいつもこの体勢だ。

起こさないように配慮してくれているのだろう。


昨夜はこの寝室で眠りたくなかった。

けれどベッドはここにしかないし、リビングのソファや自室で眠っていたらきっと彼は不機嫌になる。


それに間違いなく理由を尋ねられる。

その時になんて答えればいいかわからない。


せめて彼が目を覚ます前にここから離れたい。

そっと慎重に腕を外す。


疲れ切って熟睡しているのか、彼は目を覚まさなかった。

その様子に胸を撫で下ろし、大急ぎで身支度を整える。


まだ出社時間までは余裕があるが、今日はもうこのまま家を出ようと決める。

今の私は平常心で彼と話す自信がない。


ただ逃げているだけだとわかっている。

いつまでもこんな真似は通用しないと理解している。


それでも、もう少しだけ。

自分の気持ちに冷静に折り合いがつけるようになるまで、上手にこの人を諦められるようになるまで時間がほしい。