……私が妻なのに、丸きり蚊帳の外だ。


何も知らないことが悔しい。
見下したような彼女の態度に余計に腹が立つ。
どちらの劣情がより強いのか、その二つが渦を巻いていて、自分でも測れない。
焼け付くような感情に眩暈を起こしそうになって、深呼吸をした。

彼が、自分の背景……過去や家族のことに触れられたくないのは最初からわかっていた。
お互いのことに触れない、そんな関係が楽だからこの結婚を、私も彼も選んだのだ。

だから私に、郁人を責める筋合いはないのだけれど……。
いや、でも、さすがに婚約者の存在くらいは情報として聞いておきたかった。
それとも、結婚したことでその話は綺麗に破談になったつもりだったのだろうか。

どちらにせよ、こうなればさすがに郁人ときちんと話をしなければいけないと思う。現実に私の前に婚約者が現れたのだから、触れないわけにはいかない。

「はー……」

もう一度、嫌な感情と一緒に深く息を吐き出して、彼女から遅れて来客ブースの外に出る。突然、河内さんの声がした。