イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
ゼロからのスタートとは言うけれど
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 私が彼に指輪のサイズを告げてから、約二か月半が過ぎていた。ゴールデンウィーク前で爽やかだった春の気候は、梅雨を通り過ぎ早くも真夏の暑さへと移り、今年も酷暑の予報がテレビで囁かれている。


 といっても、高層階の窓越しに見える景色からは伺えないけれど。今日は空気が濁っているのか、少し薄い空の色だ。建物のほとんどが、今の私の目線より低い位置にある。


「……すっ、ご」


 佐々木さんの住居はタワーマンションというやつで、入口もまるで高級ホテルのエントランスのようだった。部屋も高層階にあり、下を見下ろすとお腹がもやっと痛くなる。
 ……ちょっと嬉しい。一回、中に入ってみたかったんだよね、タワマン。


 現実には、入るどころか今日からここに住むのだけれど。それにしても、我が社期待のエリート社員だからといって、こんなにすごいマンションに住んでいるとは思わなかった。きっと、私のお給料とは段違いなのだろう。


 とてもマンションとは思えない、広々とした住まいだ。玄関とリビングを繋ぐ廊下の左側に扉が三つ、一番手前が寝室で真ん中にゲストルーム、リビングに近いところに書斎。ゲストルームを私の部屋にしてくれているそうで、先日、宅急便で送った荷物は既に運びこまれている。


今、手持無沙汰に窓際で立ち尽くしているリビングにも、どどんと大きなソファが置かれていて、それが邪魔にならないだけの空間がある。
生まれ育ちも庶民の私は、『これ、掃除大変だ』と、真っ先に思ってしまった。

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