独占欲強めな同期の極甘な求愛


試飲会は大盛況の末に幕を閉じた。片づけを終え、会社を出たのは8時だった。江頭さんも、ほとんどなにもしていない三井さんも打ち上げに行くと言っていた。私も一応誘われたけど、一日立ちっぱなしでクタクタだし、それに明日も仕事だからと断った。みんな本当にタフだ。

ビルの隙間に浮かぶ月を見上げはぁーとため息をつく。花笑ちゃんの言っていた理由っていったいなんだろう。今まで深く考えたことなかったけど、ほかにあるとすればなに? あれから色々考えてみたけど一向に浮かばない。

だけどどうして花笑ちゃんはそう思ったのだろう。彼女はエスパーか。それとも臣になにか聞かされたか……。いや、どちらもありえない。

「美麗」

とぼとぼと歩いていると、後ろから軽快な足音とともに聞こえてきた私を呼ぶ声。振り返らずとも誰だかわかってしまう。

「臣、お疲れ様。打ち上げ行かなかったの?」
「あぁ。今日はもうパスした」
「そうなんだ」
「久しぶりに一緒に帰るか」

私のところまでたどり着くと、ニッと口元を上げ笑う。その笑顔にドキリとする。こんなところ誰かに見られたりしたら嫉妬の嵐でどんな嫌がらせをされるかわからない。だけどきっと大半の人が打ち上げに行っているだろうし、臣がそう言うならとコクコクと頷いた。

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