「本当に真っ直ぐ帰りましたー?」
「いやいや、それ私じゃない。それにそんな人たくさんいるでしょ」

目を細め疑うような目で覗きこまれ、慌ててもっていたジョーロを振り回し否定する。

「まぁそれもそうですよね。白鳥さんが都倉さんと二人で歩くはずないですもんねー」

その言われようにちょっとムッとしたけど、周りから見ればそうだろう。地味な私と会社の王子。結び付けようにも結び付かないはず。

「誰だったんだろう。もしかして、彼女かなー」
「さ、さぁ……どうだろうね」

深刻そうな声を上げる江頭さん。やっぱり会社の近くで一緒に歩くのはまずかった。

「密かに狙ってたんだけどなー。もしかしてその人と結婚するのかなー」
「え? 結婚?」
「都倉さんどうやらお嫁さん探ししてるみたいです。昨日企画部の課長が言ってました。昇進したいなら結婚したほうが有利だって自分が勧めてるって」

打ち上げの席でそんなことを……。きっと課長の言葉に、その場の空気は一変しただろう。臣狙いの子が慌てる様子が想像できる。

だけど臣がお嫁さん探しをしているというのが知れ渡った以上、臣は大変なことになっているんじゃ。昨日の相手は誰だって聞かれているだろうし、こぞって臣にアプローチを仕掛けているかも。

複雑な気分。昨日まで二人きりの空間で、二人だけの時間を過ごせていたのに。ますます二人になることが難しくなる。もしかすると水曜日の約束だって。どうして公に言っちゃったんだろう、企画部の課長は。江頭さんがいるのにも関わらず、思わず小さく溜息が零れた。