クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
振り回される女

「すいません大下さん。私ったら勝手に……本当にすいません。全て忘れて下さい」
ブレンド代を払わなきゃ。
いやホテルのコーヒー代ってめちゃ高いよね。そんな事より私のバカ。
バッグから財布を出そうと焦っていたら、長田さんが先に1000円札を出してくれた。

「ご迷惑をおかけしました」
クールに長田さんはそう言うけれど、大下さんはそれを無視してお札をテーブルに滑らせて長田さんに突き返す。

「楽しい時間を過ごせたから、これはいりません。僕は忘れないよ玲菜さん。また連絡します」
大人の余裕でそう言うので、私は「いや忘れて下さい。本当に申し訳ありませんでした」と、再び謝ってたら、長田さんは私の腕を強い力でつかんでいた。

悪いのは私なんだけど
今日初めて会ったのに上から目線で怒ったり、腕をつかむなんて、とんでもない男だ。
私が元気なら蹴り入れるのに
全て私が悪いから……なすがままです。
逮捕された万引き犯のようにうつむきながら長田さんに連れられて、今まで座っていた後ろ側の席に腰を下ろした。

ここから見る景色も綺麗
だけど
向いでイラッとしてる医者が怖すぎた。

「すいませんでした」

「楽しそうに間違えた相手と笑って過ごすなんてメンタル強いね」

「私の事、いつから気付いてました?」

「最初からわかった」

「はぁ?」
ゆるふわお嬢様スタイルから出る声じゃない。居酒屋でセクハラを受ける寸前の声が自分の口から出てしまった。
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