一目惚れの彼女は人の妻
人妻の浮気癖〜俊輔Side〜
 あの夜の宏美さんは、何だったんだろう。

 俺はあの夜以降、ずっとその事を考えていた。公園での宏美さんの言葉や、大胆過ぎる行動の意味を。

 宏美さんは、他の女に触ってほしくないと、何度も言っていたと思う。だが、他の女って誰の事なんだろう。俺には全く心当たりがない。付き合ってる女はいないのだから。

 いや、待てよ。宏美さんと最初に出会ったホームセンターで、宏美さんは旦那の篠崎課長と、幼い赤ん坊が一緒だったわけだが、俺にも連れがいたんだった。今も俺の横で寝ころび、スマホをいじってる妹の恵美が。

 確かあの時、恵美は俺の腕に手を絡め、ぴったりくっ付いていたと思う。俺や恵美にはいつもの事だが、はたから見たら、兄妹というよりも恋人同士に見えたかもしれない。いや、間違いなく見えたはずだ。

 なんだ、そういう事だったのか。つまり宏美さんは、恵美の事を俺の彼女だと勘違いしたに違いない。だから、恵美に嫉妬して、自分を触ってほしいと言ったのだと思う。嫉妬にしては、ちょっとばかり激し過ぎた気はするけども。

 宏美さんって、意外におっちょこちょいで、可愛いところがあるんだな。ますます好きになりそうだ。

 ん? ちょっと待て。

 という事は、宏美さんも俺を好き、って事になるよな。俺としてはすごく嬉しいが、それでいいんだろうか。子持ちの人妻が、女の子みたいに恋をしていいのか? 夫以外の男に。

 いいわけないじゃないか。こんな事は思いたくないが、絶対思いたくないが、宏美さんって、浮気癖があるのかもしれない。
< 70 / 100 >

この作品をシェア

pagetop