私たちの六年目
「じゃあ、二人で暮らす新居を探さない?」


「え……?」


新居?


「いつかは一緒に暮らすんだし、だったら今すぐでも良いよね」


「あー、まぁ……」


それは、確かにそうだけど。


まだ俺の両親に話していないのに、早過ぎなんじゃないかな。


「私ね、物件をいくつか検討しているの。

ねぇ、ここなんてどうかな?」


そう言って、梨華が俺にスマホの画面を見せた。


「2LDKのマンション?」


「うん。場所もね、秀哉の職場から20分だし、今よりも近くなるわよ」


「ふぅん」


今より職場が近くなるのはありがたいけど。


でも……。


「家賃が14万……?」


「そうだね。大体、この辺りの相場はこれくらいかな」


「それは、ちょっと高くないか?」


今の家賃の約2倍だもんな。


それが毎月となると、負担はかなり大きいと思う。


「会社の近くにこだわるより、俺は家賃が手頃なところがいいな」


「でも、ここは駅に近いし、買い物もすごく便利なのよ。

生活に必要なものが、ほとんど徒歩圏内に揃ってるし。

ほら、赤ちゃんが産まれたら、やっぱり買い物は便利な方がいいでしょう?

私も秀哉も、車を運転しないんだし」


「それは、そうだけど。

もうちょっと探してみよう。

きっと他にもあるよ。郊外でも便利なところが」


市によって、受けられるサービスが全く違うらしいし。


そういうことも含めて考えないとな。
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