鬼畜な兄と従順な妹
気付いた気持ち ~幸子Side~
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚

 私は、自分で歩けると言ったのだけど、お兄ちゃんに抱っこされて体育館を出た。いわゆる”お姫様抱っこ”。初めてお兄ちゃんを見た時、お兄ちゃんが王子様に見えた事を思い出した。

 外はすっかり夕闇に包まれていた。もう殆どの生徒は帰った後だから、こんな姿を見られなくて良かったな、なんて思ってみたり。

 体育館の前に黒い車が停まっていて、ドアが開くと女子生徒が降りて来た。確か、2組の嶋田麗子さんだと思う。お兄ちゃんの、彼女さんの。お兄ちゃんは、「まだいたのか」と呟いた。

 麗子さんは、なぜか男物のスクバを手に提げ、こちらに向かって走って来た。

「真君、幸子さんは……?」

「大丈夫です。間に合いました」

「良かった……」

 麗子さんは、心底ほっとした、というお顔をした。私は、この人の事を誤解していたみたい。気が強くて、冷たい人だって。でも、本当は優しい人なんだわ。

 お兄ちゃんと麗子さんて、お似合いのカップルなんだなと思ったら、なぜか胸の辺りがキューっと、締め付けられる感じがした。
< 58 / 109 >

この作品をシェア

pagetop