クールな御曹司と愛され新妻契約
第四章 秘密の契約書は涙で滲む
六月初旬、少し汗ばむような陽気のよく晴れた夏空の下。

都内中心部にある高級ホテルのガーデンテラス付きバンケットホールにて、冷泉ビバレッジの新商品をPRするレセプションパーティーが開催されていた。

予定通り第二部の始まる午後十二時から参加することになった私は、冷泉ビバレッジの副社長の妻として千景さんの側に控えながら、関係者に挨拶をする彼について回る。

第一部のプレス向けプレゼンテーションに招待されていたメディア関係者に加えて、業界関係者や有名人、広報などの担当者ではない冷泉ビバレッジの社員とその家族など、およそ三百人が参加しているらしい。

空調の効いた涼やかなバンケットホールには、『初夏の柳緑花紅』コンセプトに百花繚乱の花々が咲き美だれている。

その装花をプロデュースしたのは、なんと有名華道流派の次期家元にあたる伊能志織さんだそうだ。

テレビでも時折見かける俳優のような風貌の美青年が作り上げた独特の世界観は、見るものを圧倒させた。
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